金融機関、宅建業、貴金属取扱業のみなさんへ。eKYCを導入したほうがいい理由とは? 2020年4月の犯収法改正に向けて

2020年4月に犯収法(犯罪収益移転防止法施行規則)が改正され、銀行や証券会社、カード会社だけではなく、宅建業、貴金属取扱業などの業態においても本人確認方法が変更されます。変更点のひとつとして注目したいのは、eKYCを利用しなかった場合の本人確認の厳格化。そもそも犯収法とは何なのか?eKYCとは?導入すると、どんなメリットがあるの?などについて、わかりやすく解説します。

目次

  1. 1. 2020年4月の犯収法(犯罪収益移転防止法)の改正施行で、本人確認の条件が変わる
    1. 1-1. 新しい本人確認方法「eKYC」
    2. 1-2. そもそも犯収法って?
    3. 1-3. 犯収法改正の背景
  2. 2. eKYCとは?おさらいしましょう
    1. 2-1. eKYCならオンライン上で本人確認が完了
    2. 2-2. eKYCの代表例1「顔写真+免許証写真」
    3. 2-3. eKYCの代表例2「顔写真+ICチップデータ」
  3. 3. 2020年4月の改正内容とeKYCのメリット
    1. 3-1. 2020年4月から何が変わるの?
    2. 3-2. eKYCを導入するとどんないいことがあるの?
    3. 3-3. eKYCの必要性
  4. 4. どんなeKYCサービスがあるの?

2020年4月の犯収法の改正で、本人確認が変わる

新しい本人確認方法「eKYC」

日常生活において、たとえば銀行口座を開く場合や、クレジットカードを作る時など、申し込み者が本人であることを確認される場面があります。こういった本人確認のことを一般的に「KYC(Know Your Customer)」といいます。

なかでも、オンライン上で本人確認が完結することを「eKYC(electronic Know Your Customer)」と呼び、事業者・利用者の両方にメリットのある新しい本人確認の方法として注目されています。

ひと昔前は、クレジットカードなどの申し込みから発行まで、1週間程度の期間がかかっていたかと思いますが、最近、申し込みから時間をかけずに利用できる事例が増えています。これは、2018年の犯収法の改正によって、eKYCが認められるようになったからなのです。

一方、2020年4月の犯収法改正によって、本人確認に求められる条件が厳しくなり、サービスを提供する事業者にとっても、利用者にとっても、本人確認のための手間が増える可能性があります。

このページでは、金融機関や宅建業、貴金属取扱業など、取引に当たって本人確認を必要とする事業者に向けて、「犯収法の改正によって対応しなければならないこと」「eKYCを利用することで得られる事業者・利用者にとってのメリット」を解説します。

犯収法(犯罪収益移転防止法)の改正施行による、本人確認方法の変遷の図

そもそも犯収法って?

犯収法とは、「犯罪収益移転防止法」の略称で、犯罪による収益が移転して、さらなる組織的な犯罪を助長するのを防ぎ、国民の安全な生活と経済の健全な発展のために制定されたものです。

組織的な犯罪行為として代表的なものとしては、マネー・ロンダリング※1やテロ資金供与※2が挙げられますが、それらの犯罪行為を資金面から撲滅することを目指しています。こういった犯罪行為への対策は、国際的な協調が不可欠なことから、日本においてもFATF※3の勧告等を反映し、随時、法改正が行われてきています。

※1:マネー・ロンダリングとは?
犯罪行為で得た資金を正当な取引で得た資金のように見せかける行為や、口座を転々とさせたり、金融商品や不動産、宝石などに形態を変えてその出所を隠したりすること

※2:テロ資金供与とは?
爆弾テロやハイジャックなどのテロ行為の実行を目的として、そのために必要な資金をテロリストに提供すること。架空名義口座を利用したり、正規の取引を装ったりと、お金の流れを隠す点でマネー・ロンダリングと共通している

※3:FATFとは?
金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering)。1989年アルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間会合。2001年アメリカ同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進において指導的役割を担っている

犯収法改正の背景

近年においてはマネー・ロンダリングの形態が金融機関内にとどまらず、不動産売買や弁護士に資金の保管を依頼するなど、手口が複雑化してきています。そこで宅建業や貴金属取扱業など、金融機関以外の事業者にも犯収法の適用が広げられました。

しかしながら本人確認における新たな悪用の手口があとを絶たないため、現状の確認方法も強化する必要があります。たとえば、代表的な手口のひとつとして、免許証の使い回しがあります。免許証の顔写真の箇所に、別の顔写真を貼りつけて申請に利用するという不正が非常に多いとされており、対策を迫られています。

さらに、インターネットバンキングの普及や、仮想通貨、キャッシュレス決済・スマートフォン決済の広がりも確認方法の強化の一因となったと考えられます。
こういった背景から、犯収法は改正を重ね、最近では2018年11月にオンライン上での本人確認完結が認められた一方、オンラインを利用しない場合の厳格化が2020年4月に迫っているのです。

eKYCとは?おさらいしましょう

eKYCならオンライン上で本人確認が完了

2020年4月の改正内容の前に、2018年11月に改正された内容をおさらいしましょう。

この改正により、ソフトウェアを用いた本人確認において、オンライン上で完結する方法が加わりました。従来必要とされた転送不要郵便の発送がなくなり、システムによって免許証の顔写真とスマートフォンで撮った顔写真が同一人物であることを確認する方法、あるいは免許証のICデータと顔写真の一致を確認する方法などが認められることになったのです。

これらの方法をとると、郵便物を介することなく即時に本人確認できることから、たとえば口座をすぐに開設したい場合や、外国為替(FX)において即座に取引したい場合などに利用することができます。

一般に、こういったオンライン上で本人確認が完了することを「eKYC(Know Your Customer)」といいます。

eKYCの代表例1「顔写真+免許証写真」

現在の日本におけるeKYCについて、代表的な方法を2つご紹介します。

eKYCの代表例1「顔写真+免許証写真」の図
図1:eKYC代表例1
出典元:警察庁、犯罪収益移転防止法の解説等
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/kaiseishiryo20181130.pdf

1つめは、本人の「生」の顔写真と免許証の顔写真を照合させる方法。
現像された写真などではなく、生身の人間の画像であることが重要となり、免許証についても厚みなどから「本物」であることをソフトウェア側で確認します。

eKYCの代表例2「顔写真+ICチップデータ」

eKYCの代表例2「顔写真+ICチップデータ」の図
図2:eKYCの代表例2
出典元:警察庁、犯罪収益移転防止法の解説等
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/kaiseishiryo20181130.pdf

2つめは、本人の「生」の顔画像と、免許証等のICチップ内の情報を照合させる方法。
この方法の場合、ICチップ内の情報を取り出すには免許登録時の暗証番号が必要となります。さらに、現在のiOSではICチップ内の読み取りを行うことができません(Andoroid端末では可能)。

免許登録時の暗証番号を覚えている方は少ないと予想されるため、多くの場合、eKYCでは図1の方法がとられています。また、いずれのソフトウェアにおいても、不正・犯罪行為が横行しないような対策が練られています。

2020年4月の改正内容とeKYCのメリット

2020年4月から何が変わるの?

2018年11月の改正により、特定事業者の提供するソフトウェアを用いた本人確認方法(eKYC)では転送不要郵便の発送が不要となった一方で、2020年4月からはそれ以外の確認方法が厳格化されます。

たとえば、これまで主流であった郵送を用いた本人確認において、本人確認書類を原本ではなくコピーで提出する際には1種類の書類を用意すればよかったものが、2020年4月からは2種類の書類を用意することが求められるようになります(住民票などの原本書類の提出の場合の条件は変わりませんが、住民票などを市役所に取りに行くなど利用者に相応の手間がかかります)。

これまでは免許証のコピーだけで対応できていたものが、パスポートや在留カード、マイナンバーカードといった書類の準備が必要となり、利用者にとって負担が大きくなることが予想されます(図3参照)。

犯収法(犯罪収益移転防止法)の改正に伴う本人確認の方法の図
図3:改正犯収法の概要

本人確認のための利用者負担がさらに大きくなると、もっと便利な他の方法をとりたいと考える方も多いのではないでしょうか。そこで今注目されているのがeKYCなのです。
次の項では、eKYCを導入した場合のメリットについて具体的にみていきます。

eKYCを導入するとどんないいことがあるの?

eKYCの導入メリットは大きく分けて2つあります。
コスト削減
契約離脱の最小化
の2つです。

図4と図5で、eKYCを導入していない場合と導入した場合の本人確認におけるアクションやコストを比較してみました。

図4(eKYCを導入していない)のほうが図5(eKYCを導入)に比べてアクション数が多くなっています。これはつまり、郵送物に関する人的コストおよび、ペーパー+郵送料コストが重なっているということです。転送不要郵便としてよく利用される簡易書留の料金は1通310円。郵送料だけでも、eKYCを導入すれば「310円×利用者数」のコストカットが見込めます。

eKYCでない場合…郵送の手間による人的コスト、ペーパー+郵送料コストがかかるの図
図4:eKYCでない場合…郵送の手間による人的コスト、ペーパー+郵送料コストがかかる
eKYCの場合…ユーザー側がアプリをインストールする手間はあるが、事業者側では即時承認が可能の図
図5:eKYCの場合…利用者側がアプリをインストールする手間はあるが、事業者側では即時承認が可能

また、時間的ロスも少なくなります(図6)。

eKYCを導入していない場合は利用者が自宅に不在のため、本人確認のための郵便物を受け取れない(郵便局の保管期間は7日間)といった契約離脱のリスクを避けられず、確認に要する期間も長くなっています。

一方、eKYCを導入した場合は本人確認にかかる時間が短縮でき、契約完了までの期間が短くなっています。
利用者側では、eKYCではアプリをインストールしてもらう手間は発生してしまいますが、2種類の書類を用意しなければならないうえに、後日郵便物を受け取ってから本人確認が完了するよりも、その場で手続きが済むのを好む利用者のほうが多いのではないでしょうか。

eKYCを導入することにより時短効果と契約離脱のリスク低減効果を見込めるの図
図6:時間的な違い

eKYCの必要性

とりわけ無視できないのが社会的な流れです。インターネットバンキング利用者は2012年に全国銀行協会が調査した時点で6割以上※4、昨今の日本におけるキャッシュレス決済は約2割※5、スマートフォン決済は1割程度※6と未だ低い数字ではあるものの、この10年における急激なスマートフォンの普及は見逃せません。

2017年時点でスマートフォンの普及率は約75%※7。多くの場面においてスマートフォンさえあれば生活できる世の中になってきています。政府も国の施策としてキャッシュレス決済を推進しており、ペーパーレスが実現し、オンラインで完結するeKYCは、今後当たり前の機能になっていくのかもしれません。

※4:https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news241238_5.pdf
※5:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon/dai14/siryou2-1.pdf
※6:https://ictr.co.jp/report/20190107.html
※7:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd252110.html

どんなeKYCサービスがあるの?

2020年4月の犯収法改正によって、これまで通りの本人確認方法を続けていると事業者・利用者ともに負担が増え、eKYCを利用したほうが、負担が少なくなることがわかりました。

eKYCを導入するにあたって、具体的にどのようなサービスがあるのかについては次回以降で説明していきます。ご興味を持たれた方はこちらのページからお気軽にお問い合わせください。

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